こんにちは、映像翻訳者のル・モンです。
仕事柄、「高い英語運用能力」いわゆる、ネイティブレベルの英語スキルを目指すためにCEFR(セファール)のC2レベルを目指しています。
もっと自分の『英語脳』を鍛えて、ネイティブのように英語を自由自在に使いこなせたら日本語⇔英語の伝える表現力も解釈するスピードもあがるのにな、と常に考えています。
そこで今回は「英語脳の鍛え方」について考えてみました。
英語脳を鍛えるコツ2つ
「英語脳」というのは、実際にそういう「脳」があるというわけではなく、英語を英語で処理することができる「スキル」のようなものです。
このスキルは普段からのトレーニングで鍛えることができます。
英語を読んだり聞いたりした時に、いちいち日本語に翻訳してから理解するのではなく、その瞬間から英語のまま理解する、インプットした情報をローデータでストックできるようになるイメージです。
そんな脳のトレーニングには2つのコツがあります。
英語脳を鍛えるコツ①
✓ 環境を整える
まずは学習環境を整えます。
学習といっても、今回は「英語的」生活を送るという意味です。
英語脳を鍛えるには4技能(リーディング、リスニング、スピーキング、ライティング)をフル稼働させると効率的です。
大事なのは、英語で考え、話し、読み、聞いて、書く環境に意識的に無意識に自分を置くことです。
英語脳を鍛えるコツ②
✓ 「1日○○分英語を勉強したら英語脳になれる」という考えを捨てる
何かを目指す際に、よく「どれくらいの時間をかけたら達成するか」のような目標目安があると思います。
例えば、ある試験対策で言えば1日3時間で1年とか、キャリアで言えば10年だとか。
確かに、目標達成から逆算して目安となる時間を割り出すことは有効です。特定の英語試験に向けて「1日に単語を何個覚える」「公式問題を解く時間を2時間」など、具体的な数字や時間を目安や目標にすることは効率がいいと思います。
ただし、「英語脳を鍛える」ということに関して言えば、学習内容や範囲を時間などで区切る時は注意が必要です。
1日30分は英語を聴く ≠ 英語脳になれる
これは過去に私も経験した失敗例です。
翻訳者になる前の仕事についていた時、通勤時間など移動中は英語ラジオを聴くということをやっていました。
ただ単に聞き流すことが多く、実はスキルアップできていませんでした。
例えば、1日30分英語リスニングに時間を使ったとしても耳が英語に慣れるだけで終わってしまう可能性があります。
知らない単語を放置したまま聞き流すだけでは、何が話されているのか内容が理解できないままだったり。。。
「英語脳」は4技能を駆使しないとバランスよく鍛えられません。
「1日○○分リスニングする」、「1日○○分英語で本を読む」という目標を立てた場合、そのシングルタスクを全うすることだけに意識がいってしまいがちなので気をつけましょう。
「英語脳」って合否やスコアなど分かりやすい指標がないので、それこそネイティブのように常に英語で日常を過ごすような機会を増やした方が有効です。
では、どうしたら「意識的無意識に」英語的な生活を送れるでしょうか? 私なりの工夫はこんな感じです。
日本にいながら英語環境を作る方法
私は翻訳を仕事にしているので、日常的に英語を使います。
でも、日中のいわゆる営業時間以外でも、英語とはあまり離れずに生活できています。
自分的「英語」デフォルト環境
・スマホの言語を英語にセット
・メモは英語で走り書き
・海外エンタメは字幕なしで
・英語で独り言
・海外ニュース / podcast
・ビジネス書は原書で読む / 聞く
これらは学生時代から続いているものもありますし、社会人、翻訳者になってからあえて意識して取り入れたものもあります。
基本的に意識していることは2つです。
英語でも入手できる情報は英語優先にする。
目につくものをなるべく英語にしておくこと。
ニュースは日英両方をチェックし、取り上げているトピックや伝え方などの表現を比べたりします。
書籍など、原書が英語でKindleやAudiobookで英語のままインプットします。
普段手放せないスマホは、英語設定にしておくとgoogleなどのホームにアップされてくるサイトも全部英語になります。
Siriも英語設定にしておけば、当然ですが日本語で話しかけても答えてくれません(笑)。
海外からのジャンクメールも英語であれば削除する前に一読して表現などをチェックします。
エンタメに関しては基本的に好きなものを見ますが、海外ドラマや映画は字幕なしで視聴します。
メモ書きも自分用であれば英語で書くことが多いです。(最近は漢字が本当に書けなくなってきたと実感しているので、英語のスペルと同様に意識して両方書くようにしています。)
バイリンガルの頭の中
2つの言語、例えば日本語と英語の2か国語を使う人には、いわゆる「英語脳」と「日本語脳」が備わっている状態と言えそうです。
先ほども言いましたが、ここでいう「脳」とは「スキル」のこと。
脳の仕組みが気になったのでリサーチしてみました。
左脳のはなし
実際に言語能力に深く関わっている脳は「左脳」ですね。
私も専門ではないので難しいことは分かりませんが、ブローカ野という左脳にある領域は言葉を組み立ててアウトプットする役割があるそうです。
ほかにもウェルニッケ野(音声言語を認識)、左縁上回(音韻)、左角回(言語理解)… 難しいですね。
あるソースの説明を参考にすると、左脳の言語に関するシステムはこんな感じみたいです。
この各エリアに情報を運ぶ回路があるイメージです。
バイリンガルは英語で得た情報はそのまま英語で、日本語なら日本語のまま、それぞれのエリアに情報を飛ばしあう感じなんだと思います。
それぞれの言語の回路に対して、自然にスイッチを切り替えることができる状態ということですね。
私の周りの2か国語以上を使う人たちは、だいたいこの「スイッチ切り替え」のイメージを持っているそうです。
翻訳者の頭の中
英語脳を鍛えるには、基本的には英語環境を作り、さまざまな情報を英語で処理するクセをつけるといいと思います。
これは、脳内の言語に関わるエリアを行きかう回路を強化するためです。
1言語でその回路を網羅し、2言語目を使う時はスイッチを切り替える。
でも、翻訳者や通訳者の頭の中をイメージした場合、スイッチを切り替える、というよりは2つの部屋でイメージした方が分かりやすいかもしれません。
英語を英語で考える、日本語を日本語で考える、のではなく、「英語を日本語で」「日本語を英語で」のように、クロスしてインプットとアウトプットする必要があるからです。
私のイメージはこんな感じです。
翻訳者である自分が意識しているのは、この絵で言うと真ん中にある”CHANGE”の回路を強化することです。
ソース言語(翻訳元の原語)からターゲット言語(翻訳先の言語)へ変換するには、お互いの言語を自由自在に行き来できると仕事のクオリティもスピードもあがると思っています。
英語脳を鍛えるということだけを考えるならば、一方通行の「英語は英語で」というやり方がベストですが、翻訳や通訳を仕事として考えるのであれば少し違う学習アプローチが必要です。
いってみれば、違う筋肉を鍛えるようなもの。
英単語1つ覚えるにしても、アプローチは違ってくると思います。
✓ 英語脳を鍛えるのであれば「英英辞典」で調べて覚えるのがいい。
✓ 翻訳者・通訳者として単語を覚えるのであれば、必ず「対訳」としてそれぞれの言語の表現を覚える。
翻訳の仕事では、ひとつの単語に対して色々な表現をたくさん脳内にストックしておいて、いざ訳す時にその文章の本質的な意味を適切に言語化するのが仕事。
正式名称や適切な単語があるのに、回りくどい翻訳表現を選ぶと相手に伝わらないリスクが高くなります。
日本人に英語脳って必要?
結果から言うと、個人的には日本人でも英語脳は必要だと思います。
と、いうかあった方が絶対お得だと思うからです。
英語に限らず、ほかの言語を深く学ぶことに色々メリットがあるからです。
英語脳を鍛えてバイリンガルになるメリット①
英語脳を鍛えることは、単に英語ができるようになるというだけではありません。
学習するメリットがあります。
活動の場が広がる。
単純に、世界でも話者が多い英語という言語を理解し、使うことによって自分のコミュニケーションの幅が日本から世界へと広げることができます。
これは一番分かりやすいメリットですね。
英語脳を鍛えてバイリンガルになるメリット②
考え方や世界の見え方が広がる。
1つ目のニュアンスにも近いですが、こちらはどちらかというと心理的なもの。
文字通り視界が広がり、見える世界が変わるという感じです。
例えば、「使う言語によって性格が変わる」という話があります。
ある研究
実験内容:母国語が違う対象者にある画像を見せ、映っているものを説明してもらう。
使用した画像:人物が車に向かって歩いている画像
結果:
母国語がドイツ語話者
『人物とその行動目的までに注目し「車に向かって人が歩いている」と表現。』
母国語が英語話者 『「人が歩いている」と表現。』
英独のバイリンガル 『表現はその時に使っている方の言語に影響される。』
ある教授の研究
実験: 日本人とアメリカ人のミックスの女性を対象に、日本語と英語両方で書いたある文章の続きを表現してもらった。
使用した文章:「自分のやりたいことが家族に反対された時は・・・」
結果:
ある参加者が日本語で書いた続き『「とても不幸なこと」と締めくくった。』
英語で書いた続き 『「私はやりたいことをやる」だった。』
違う言語を身につけると自分の考え方や世界の捉え方が広くなると言えると思います。
英語脳を鍛えてバイリンガルになるメリット③
「認知症になりにくい」可能性がある。
カナダやベルギーの大学の研究で「バイリンガル(またはマルチリンガル)は認知症の発症が遅くなる傾向がある」というものがあります。
トロントのヨーク大学による研究では、モノリンガル(単一言語使用者)よりもバイリンガル(複数言語使用者)の認知症発症年齢が平均4年遅いことが分かったとしています。
ある動画では、違う言語をアウトプットする時は脳のスイッチを切り替えることになるので、そのたびに脳の「記憶」する機能を鍛えることに繋がっているとしています。それが高齢になった時に認知症の発症を遅らせるとしています。
英語脳を鍛えてバイリンガルになるメリット④
グローバルなマインドセットを身につけるきっかけになる。
これは英語に限らずですが、多言語を学ぶということは他の国の文化を学ぶことに繋がります。
他国の他者のことを思いやるきっかけにだってなると思うのです。
メリットと書きましたが、半分は「日本の恥をさらさない」とでも言えるかもしれません。
某世界的大規模なスポーツイベントを日本で開催するにあたり、他国への配慮が欠いていた英語表現を目にするなど、日本人として「イタイ」ことが勃発したなと感じることが結構ありました。
海外から訪れる人々に対して「おもてなし」を掲げることは素晴らしいことです。
でも、相手を知らないうちに傷つける、差別するような英語表現を使っていたりすることは、「英語ができない」ってそんな都合のいい言い訳は通用しないと思うのです。
文法が間違っていないとして、なぜその英語表現が問題になるのか、そこを理解できないとグローバリゼーションなんて遠い話だと思います。
言葉をきっかけに、文化を学び、世界に視野を向けることができると思います。
バイリンガル教育はいいのか
小さいうちからバイリンガル教育をする方がいいのか、考える親世代の方は多いと思います。
複数の言語を使えるようになることで、コミュニケーションの幅が広がる、物事を多角的に捉えることができると思います
複数の言語をいったりきたりすることで、脳の問題解決などに関連する部分が発達し「イメージ」や「クリエイティブ」の思考が豊かになるという一面もあるようです。
ただ、母国語がしっかりしていない年齢からバイリンガル教育を始めると混乱するのではないかと不安になる気持ちも分かります。
どっちの言語も中途半端になってしまう可能性もないとは言えないと思います。
個人的には、どちらかというと賛成よりです。
確かに、「母国語」を確立させないと、後々苦労するという話は聞くのですが、やはりどちらにしても1人1人の性格や能力をきちんと見ながらフォローする必要があると思うので、その個人に向くのであればバイリンガル教育を取り入れてもいいと思います。
これからの時代を生きていくのに、若いうちから異文化や言語に触れるキッカケを掴んで多様性を身につけることもできる有益な側面があると思います。
まとめ:英語脳を鍛えよう!
- 英語脳を鍛えるコツは2つ。
意識的に「無意識に英語に触れる環境」を整える。
「1日○○分」のように勉強する時間は区切らない。
- バイリンガルの頭の中には英語の回路と日本語の回路がある。
- 英語脳を鍛えると世界の捉え方も広がり、認知症にもなりにくいのでお得。
- バイリンガル教育で早いうちから多様性も身につけ、クリエイティブになれる可能性がある。

